超音波の基礎原理を学ぼう!

肝臓の内部エコーの評価に困っています

Q:検査所見に肝臓の内部エコーが「粗造」や「不均一」と書いてありますが、写真で違いがわかりません

 

A:まず、肝臓の内部エコーについてですが、内部エコーを構成する「細かい点状の実質エコー」はスペックルパターンと呼ばれます。

 

これは、超音波の散乱波が干渉し合ってつくられる像で、内部エコー(スペックル)の粒の粗さ(細かさ)は、モニタの性能だけではなく、使用する超音波の周波数や画像の設定でも大きく左右されるため、同じ被検者でも使用する装置(設定)によって見え具合が変わってくるという性質を持ちます。

 

そして、肝臓の内部エコーの評価(所見)としては、「粗さ」や「輝度」、「均一性」等を表現するのが一般的だと思いますが、それぞれが絶対値で表されるような定量的な評価基準ではなく、あくまで相対的で主観的な(正常肝に対して変化がみられるか?そして、数値化ができるものではなく、検者の主観に頼る部分が大きい)評価である事をあらかじめご承知下さい。

 

その上で、肝臓の内部エコーの評価について考えてみます。

 

まず「粗さ(細かさ)」ですが、スペックルの細かい点状の実質エコー像は、実際の肝臓の組織を忠実に表していないのですが、慢性の肝障害等により線維化が進む(偽小葉化)ことで、スペックルの粒も粗造になる傾向にあります。 したがって、内部エコーが「粗造」と評価するのは、慢性肝炎や肝硬変を示唆する所見になります。

 

輝度に関しては、上昇していれば「脂肪沈着(脂肪肝)」を考える所見で、低下していれば、うっ血や浮腫(うっ血肝や急性肝炎)を考えたい所見となります。

 

均一性は、主に「輝度の均一性」を示唆し、不均一な脂肪沈着や住血吸虫症、ポルフィリン症などで輝度が不均一化します。

 

もしかすると、写真には写っていない場所に輝度が不均一な部分があったり、表面の凸凹不整や肝縁の鈍化があったのかもしれません。また、ラボデータで慢性の肝障害を示唆するデータがあったので、脂肪肝+慢性肝炎と考えて粗造と報告した可能性があります。ともかく、前回の検査を行った方は「慢性的な肝障害があるのでは」ということを伝えたくて「粗雑」と評価したのではないでしょうか。

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